​[断片番号:006] 荒野に刻印された巨人の掌「仏手印」

LOCATION: 43.7033, 112.0209
OBJECT: THE GIANT HAND (BUDDHA’S PALM)
STATUS: VISIBLE / LAND ART

中国・内モンゴル自治区、エレンホト(二連浩特)近郊の荒野。座標 43.7033, 112.0209 を衛星が捉えたとき、そこには物理的常識を揺るがすような光景が映し出される。乾燥しきった褐色の地表に、まるで巨人が力強く手をついたかのような、巨大な「掌(手のひら)」が刻まれているのだ。

その大きさは手のひら一つで約4万平方メートル、直径にすれば約100メートルを超える。指の関節、手のひらの皺(しわ)に至るまでが生々しく再現されており、空から見下ろすと、まるで大地そのものが生命を持ち、天に向かって何かを訴えかけているかのような錯覚に陥る。

「仏手印」という名の芸術とプロパガンダ

この場所がGoogle Earthユーザーによって発見された際、かつての巨大な五芒星と同様に、「未知の文明の跡」や「宇宙人へのサイン」といった数々のオカルト的憶測を呼んだ。しかし、この巨大な手の正体は、2018年に制作された**「仏手印(Buddha’s Palm)」**と呼ばれる大規模なランド・アートである。

この作品は、地元自治体や観光プロジェクトの一環として、この不毛の地に注目を集めるために建設された。重機を用いて地表を削り、石や砂を配置することでこの立体的な陰影を作り出している。興味深いのは、この「手」の周囲には恐竜の足跡を模した造形も点在しており、地域全体を一つの巨大なキャンバスとして捉えている点だ。

【関連リソース】
この地域(二連浩特)は恐竜の化石発掘地としても有名であり、周辺の観光開発については、中国の公的なニュースメディアや観光局のアーカイブにおいて、地域振興策としての記録が残されている。
Reference: Inner Mongolia Autonomous Region Official Website

風化する「信仰」の形

正体が「アート」であると判明しても、この座標が放つ不気味さは消えない。内モンゴルの厳しい風雪にさらされ、時間の経過とともにこの「手」の輪郭は少しずつ崩れ、周囲の荒野へと溶け出し始めている。

意図的に作られた「象徴」が、人間の手を離れ、自然の侵食を受けることで、かえって本物の「遺跡」のような風格を帯びていく。それは、文明が大地に刻もうとした傲慢なまでの存在証明が、ゆっくりと風化していく過程の記録でもある。

  • 視覚的トリック: 指の皺に見える部分は、実際には水の流れを制御するための溝や、観測用の通路として機能している。
  • 座標の孤立: 観光目的で作られたとはいえ、この場所へのアクセスは容易ではない。多くの人々は、この「手」を衛星写真という「神の視点」を通してのみ認識することになる。

断片の総括

大地に刻まれたこの掌は、空の上にある「眼(衛星カメラ)」を意識して作られた現代の地上絵である。それは古代のナスカの地上絵が神々に向けて描かれたのと同様に、現代の我々が「テクノロジーという名の神」に向けて放ったメッセージなのかもしれない。

もし、数百年後にこの地を訪れる者がいたとしたら、彼らはこの「手」を見て何を思うだろうか。そこに救済の祈りを見るのか、あるいはただの虚栄の跡を見るのか。その答えは、今も荒野で砂に埋もれ続けている。

断片番号:006
記録終了:2026/02/09

コメント

タイトルとURLをコピーしました