​[未完:013] 消失した2700人の記録:カザフスタン、地図から抹消された街

LOCATION: 51.1578, 66.2108 (KALACHI AREA)
OBJECT: THE ERASED CITY / SLEEPY HOLLOW
STATUS: ABANDONED / REMOVED FROM OFFICIAL MAPS

ネットの深淵で語り継がれる、住民2700人が一夜にして消えたという街「バナ・エレン」。その名称自体は、ソ連時代の機密保持のためのコードネームか、あるいは後年の創作である可能性が高い。しかし、カザフスタンの荒野、座標 51.1578, 66.2108 付近には、その伝説を裏付けるかのような不気味な「現実」が転がっている。

そこは、かつてウラン採掘のために建設された秘密都市「クラスノゴルスク」に隣接する場所だ。ソ連崩壊後、地図からその名を消されたこの地では、21世紀に入ってから、科学では説明のつかない「集団睡眠事件」が発生した。住民たちが突然、数日間にわたって深い眠りに落ち、目覚めたときには記憶を失っているという怪現象である。

「バナ・エレン」の正体:閉鎖都市の末路

「2700人が消えた」という数字は、かつてのクラスノゴルスクの人口規模とほぼ一致する。ソ連解体に伴い、戦略的価値を失った街は、国からの配給が止まると同時に、まるで魔法が解けたかのように無人へと帰した。公式記録上では「移住」と処理されているが、あまりに急速な人口流出と、残された整然とした廃墟が、後世に「集団失踪」の物語を定着させたのだ。

現在、衛星写真が捉えているのは、朽ち果てたアパートメントと、どこまでも続くステップの地平線だけである。しかし、この場所の真の不気味さは、物理的な廃墟ではなく、そこに漂う「見えない汚染」にある。

眠れる村、カラチの怪異

クラスノゴルスクの目と鼻の先に位置するカラチ村(Kalachi)では、2013年から2015年にかけて、100人以上の住民が突然昏睡状態に陥る事件が頻発した。学校の授業中、あるいは散歩の途中に、彼らは「スイッチを切られたように」倒れ、そのまま数日間眠り続けた。中には、幻覚を見たり、異常な性欲を爆発させたりする者もいたという。

政府の調査チームは、閉鎖されたウラン鉱山から漏れ出した一酸化炭素や炭化水素が原因であると結論づけたが、なぜ特定の時期に、特定の場所でだけ発生したのか、そのメカニズムにはいまだ謎が多い。住民たちはこの地を「眠れる谷(スリーピー・ホロウ)」と呼び、最終的には村全体が放棄(移転)されることとなった。

【関連リソース:カザフスタン報道アーカイブ】
カザフスタンのニュースメディア「Tengrinews」や、国際的な科学誌は、カラチ村の睡眠障害の原因究明について数多くのレポートを出している。ウラン鉱山の影響説が主流だが、一部の専門家は地下水に含まれる化学物質の相互作用を指摘している。
Reference: Tengrinews (Kazakhstan Local News)

当サイトの考察:情報の空白が生んだ「怪物」

「バナ・エレン」という伝説は、情報の遮断された閉鎖都市(ZATO)というソ連のシステムが生み出した、現代のフォークロア(都市伝説)であると当アーカイブは分析する。地図から名前を消し、住民の存在を秘匿し、必要がなくなればその痕跡ごと抹消する。国家という巨大な力によって「存在しないことにされた」2700人の影が、バナ・エレンという名に姿を変えたのではないか。

座標 51.1578, 66.2108 を見つめていると、不自然なほど四角く切り取られた区画が見える。それはかつての街の骨格であり、今はもう誰も歩くことのない「死んだグリッド」だ。集団睡眠事件は、この土地が今もなお、人間が住むには適さない「異界」であることを示唆している。

  • 抹消された住所: かつてここにあった住宅には、郵便番号も住所も割り当てられていなかった。住民は「私書箱」だけで管理されていた。
  • 残された静寂: 睡眠事件の際、犬や猫などの動物も同様に眠りに落ちたと報告されている。この座標一帯が、周期的に「呼吸を止めている」かのようである。

断片の総括

バナ・エレン、あるいはクラスノゴルスク。呼び方はどうあれ、この座標に刻まれているのは「存在の抹消」という冷酷な記録だ。2700人は消えたのではない、記録上から「消された」のだ。

我々がこの地を衛星写真で観測するとき、それはかつての超大国が隠し通そうとした「綻び」を覗き見ていることに他ならない。砂埃に埋もれた廃墟は、今日も無言のまま、かつてそこに生活があったことを、空に向けて叫び続けている。

断片番号:013
記録終了:2026/02/09

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