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[不自然な座標:092] 柳京ホテル:平壌の空に突き刺さる「滅びのピラミッド」

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LOCATION: POTONGGANG-GUYOK, PYONGYANG, D.P.R.K.
COORDINATES: 39.035659, 125.731314
STATUS: PARTIALLY COMPLETED EXTERIOR / UNOPENED
HEIGHT: 330M (105 STORIES)

北朝鮮の首都、平壌。その中心部に、都市のスケール感を完全に逸脱した巨大なピラミッドがそびえ立っている。座標 39.035659, 125.731314。柳京(リュギョン)ホテル。高さ330メートル、105階建て。1987年の着工当時、それは「社会主義国家の技術力の象徴」として世界最高層のホテルになるはずだった。

しかし、30年以上が経過した現在でも、この建物がホテルとして正式に開業したという記録は存在しない。かつてはコンクリートの剥き出しのまま放置され、国際社会からは「滅びのピラミッド(Doom Pyramid)」と揶揄された。現在は全面がガラスで覆われ、夜になれば巨大なLEDモニターとしてプロパガンダを映し出すが、その内部は依然として「空洞」のままであるという説が根強い。ここは、国家の野望と挫折が垂直に凝固した、世界最大の不自然な座標である。

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観測記録:平壌の空を裂く、異形のシルエット

以下の航空写真を確認してほしい。柳京ホテルの三翼構造は、上空から見ると巨大な鳥の足跡のようにも、あるいは何かを封印するための「結界」のようにも見える。周辺のソ連様式の集合住宅とは明らかに異質な、計算され尽くしたはずの鋭利な三角形。これほど巨大な構造物が、その本来の目的(宿泊施設の提供)を果たさぬまま、数十年にわたって都市の中枢に鎮座し続ける状況は、地球上でこの座標以外に類を見ない。

平壌市内にはGoogleストリートビューは存在しない。しかし、公式に許可された観光客や海外メディアが撮影した写真は、この建物の圧倒的な「虚無感」を伝えている。夜間に点灯する数百万のLEDが作り出す派手なイルミネーションは、その背後に潜む暗黒の客室群を隠蔽するための「光の仮面」に過ぎない。

【未完の記録】建設中断と「地図からの抹消」

1987年に着工された柳京ホテルは、当初1989年の世界青年学生祭典に合わせた開業を目指していた。しかし、ソ連崩壊に伴う経済危機、資材不足、そして設計上の致命的な欠陥(コンクリートの品質問題)が重なり、1992年に建設は完全にストップした。

存在しないことにされた16年間

建設が中断した後の約16年間、北朝鮮当局はこの建物の存在を公式記録から事実上抹消していた。外国人観光客がガイドに「あのピラミッドは何か」と尋ねても、無視されるか「知らない」と答えられるのが常習化していた。2008年にエジプトの通信会社オラスコム・テレコムの出資により外装工事が再開されたが、最上部の回転レストランを含む内部の稼働については今なお「国家機密」のままである。

当サイトの考察:垂直の墓標としての柳京ホテル

■ 考察:虚飾という名のメンテナンス

柳京ホテルが解体されず、かといって完成もされないまま維持されている理由は、それが「国家の威信」そのものだからです。もし解体すれば、それは体制の失敗を公式に認めることになります。逆に言えば、現在のLEDによる電飾は、建物としての機能を放棄した代わりに、巨大な「プロパガンダ装置」としての延命措置であると言えます。

3,000室の客室があると言われていますが、電力供給が不安定な平壌において、この巨神を満たすほどの電力が一般利用に回される日は来るのでしょうか。私たちはこの座標に、完成することのない未来を夢見た20世紀型社会主義の「剥製」を見ているのです。

【渡航勧告】平壌へのアクセスと注意事項

柳京ホテルを肉眼で観測するためには、北朝鮮への公式な観光ツアーに参加する必要があるが、2026年現在も国際情勢は極めて不安定である。

■ アクセスルート:北朝鮮・平壌市

* 出発地点:主に中国の北京または瀋陽。高麗航空のチャーター便、または列車(中朝友誼橋経由)を利用。
* 所要時間:北京から空路で約2時間、列車であれば約24時間。
* 現状:観光客が柳京ホテルの敷地内に立ち入ることは通常許可されない。観測は市内の主要観光スポット(万寿台や主体思想塔など)からの遠望に限られる。

【⚠ 渡航注意事項】

外務省の勧告: 日本政府は北朝鮮全土に対して「渡航自粛」を強く求めている。国交がないため、トラブルに巻き込まれた際の邦人保護は事実上不可能である。

政治的リスク: 許可なく写真を撮影する、体制を批判する、あるいは現地のガイドの指示に従わない行為は、長期拘束のリスクを伴う。デジタル機器の内容も検閲対象となる。

【光の側面】平壌の「新名所」としての変貌

近年、柳京ホテルはその「不気味な廃墟」としてのイメージを、テクノロジーの力で塗り替えようとしている。

  • プロパガンダ・ライトショー:夜間、建物全体をスクリーンに見立て、北朝鮮の歴史やスローガンを映し出す光の演出は、平壌の夜の数少ない見所となっている。
  • スカイラインの主役:皮肉なことに、その独特の形状は世界中の建築ファンやマニアを引き付け、平壌で最も有名なランドマークとしての地位を確立した。
  • 周辺整備:ホテルの麓には広場や並木道が整備され、市民の憩いの場を演出しようとする試みが見られる。
【観測者への補足:外部リソース】
柳京ホテルの建設経緯や内部の希少な潜入レポートについては、以下のリンク(国際的な報道機関)が詳しい。
Reference: CNN Style – Ryugyong Hotel: The world’s tallest unoccupied building
Reference: Wikipedia – 柳京ホテル
【最終警告】
柳京ホテルを画面越しに観測する際、その「完成しているかのような外見」に惑わされてはいけない。それは、脆いコンクリートの骨組みを覆い隠すための、高価なガラスのベールだ。この座標が放つ不自然な威圧感は、人々の犠牲の上に成り立つ「虚栄の重力」そのものである。深入りすれば、あなたの視座もまた、平壌の空に溶けて消えてしまうかもしれない。

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