COORDINATES: -6.3470551, 106.9972179
OBJECT: BANTAR GEBANG INTEGRATED WASTE MANAGEMENT SITE
STATUS: ACTIVE LANDFILL / EXTREME BIOHAZARD / MARGINALIZED SETTLEMENT
東南アジア最大のメガシティ、インドネシアの首都ジャカルタ。その急速な経済成長と人口爆発がもたらした「排泄物」が、一箇所に集中し、巨大な地層を形成している場所がある。その名は「バンタル・ゲバン」。ジャカルタから南東に約30キロメートル離れたブカシ市に位置するこの広大な土地は、単なる埋立地の枠を超え、一つの「生態系」と化している。総面積は110ヘクタールを超え、そこに積み上がったゴミの山は高さ50メートル、すなわち15階建てのビルに匹敵する威容を誇る。座標 -6.3470551, 106.9972179。ここは、私たちが日常から目を背けるために作り上げた、物理的な「世界の果て」であり、外界の人間が安易に立ち入ることを許されない「進入禁止区域」である。
観測データ:衛星が映し出す「灰色の不毛地帯」
以下の航空写真を慎重に観測せよ。周囲の緑豊かな農地や密集する住宅街の中で、そこだけが周囲の色を拒絶するように灰褐色に染まっているのが見て取れるだろう。航空写真モードでズームすれば、その「山」の斜面に刻まれた無数の轍と、ゴミの山を這うアリのような重機、そしてそれ以上に多い「動く点」を確認できる。その点の一つ一つが、この山で生計を立てる人々、スカベンジャーだ。閲覧者は、可能な範囲でストリートビューを使用して、このエリアの境界線を確認してほしい。そこには、都市のゴミを運ぶトラックがひっきりなしに行き交い、有毒な煙とメタンガスの靄(もや)が立ち込める、異様な光景が広がっている。ここは、現代文明が排出した負のエネルギーが凝縮された「腐敗の塔」なのである。
絶望と生の共生:ゴミ山に築かれた「国家」
バンタル・ゲバンの内部では、私たちが知る「社会」とは全く別の論理が働いている。ここには推定で数千人、時には3万人以上とも言われるスカベンジャー(インドネシア語で「パムル」)が居住し、ゴミの中からプラスチック、金属、紙を拾い集めて生計を立てている。彼らにとってこの山は「呪われた地」ではなく、日々の糧を生み出す「母なる地」であるという倒錯した現実がある。
* 垂直の居住区: ゴミの山の中腹や麓には、拾った廃材で組み立てられた小屋がひしめき合っている。電力は非正規のルートで引かれ、テレビや扇風機が回る部屋もあるという。
* 24時間の稼働: ジャカルタから運ばれてくるゴミは、毎日数千トンに及ぶ。トラックが到着するたび、人々は崩落の危険を冒してまで、より「価値のあるゴミ」を求めてダンプカーの周囲に群がる。
* 循環する生態系: 山に捨てられた生ゴミを餌にする牛やヤギが放牧されており、それらの肉が再び市場に流れることもあるという。毒素が食物連鎖を通じて循環する、恐怖のサイクルがここには存在する。
しかし、その「生」は常に死と隣り合わせだ。メタンガスの蓄積による爆発や、豪雨によるゴミ山の地滑りは、毎年のように犠牲者を出している。さらに、プラスチックやビニールが自然発火することで発生する有毒ガス(ダイオキシン等)は、住民の呼吸器を蝕み続けている。ここは、文字通り「命を削って生きる」ための座標なのだ。
管理者(当サイト)の考察:見捨てられたバベルの警告
バンタル・ゲバンを観測していると、人間の「消費」という行為がいかに一方通行であるかを痛感させられます。私たちは、便利な商品を購入し、使い、そして「捨てる」という行為によって、その物質を世界から消し去ったつもりでいます。しかし、物質は消えません。それは単に、バンタル・ゲバンのような「見えない場所」へ移動し、そこで巨大な塊となって蓄積されているだけなのです。
この座標に聳えるゴミの山は、ジャカルタという巨大都市が謳歌する繁栄の「代償」そのものです。高層ビルが空に向かって伸びる一方で、このゴミ山もまた、同じ高さへと成長し続けてきました。これは文明の影であり、決して切り離すことのできない双子のような存在です。私たちがここを「進入禁止区域」として遠ざけようとするのは、そこに自分たちの醜い欲望の残骸が積み上がっていることを認めたくないからに他なりません。しかし、山はすでに限界に達しており、溢れ出した現実はもはや隠しきれるものではなくなっています。この場所は、現代社会が直面している「持続不可能な未来」を予言する、最大の記念碑なのです。
到達の記録:悪臭の壁に阻まれた領域
この場所を訪れることは、一般的な「観光」という概念を根底から覆すことになる。そこにあるのは娯楽ではなく、剥き出しの現実だ。
* 主要都市からのルート:
ジャカルタ中心部から南東へ約30〜40km。交通渋滞が激しいため、タクシー(Bluebird等)または配車アプリ(Grab, Gojek)で1.5時間〜2時間ほどを要する。
* 手段:
ブカシ(Bekasi)方面行きのバスも存在するが、複雑なためプライベートカーのチャーターを推奨。現地周辺はゴミ運搬用の大型トラックが数多く走行しており、非常に危険である。
* 周辺の施設と見所:
スカベンジャーの学校: 劣悪な環境で育つ子供たちのために、ボランティア団体が運営する非正規の学校がいくつか存在する。ここでの教育が、唯一の「山からの脱出路」となっている。
ゴミ処理発電所: 近年、日本などの協力によりゴミを焼却し発電する施設が稼働を開始したが、膨大なゴミの量に対してはまだ「焼け石に水」の状態である。
* 注意事項:
極めて高い健康リスク: 周辺一帯には強烈な悪臭が漂い、防塵マスクなしでの接近は推奨されない。また、ハエや蚊による感染症、土壌汚染による皮膚疾患のリスクが極めて高い。現地を訪れる際は、当局の許可を得るか、現地の状況に精通したガイドを伴うこと。冷やかし半分での撮影は、住民の感情を逆なでする恐れがある。
周辺の断片:境界に咲く生命の力
* お土産(非推奨):
この場所には、観光客のための土産物など存在しない。あるのは、廃材から再生されたプラスチック製品や、リサイクルを待つ金属の山である。もし何かを持ち帰るとすれば、それは「自分が捨てたゴミがどこへ行くのか」という重苦しい自覚だけだろう。
* 周辺の食文化:
ブカシ周辺にはインドネシア伝統のナシ・ゴレンやサテの屋台が多いが、埋立地に近いエリアでは、水と大気の汚染レベルが極めて高いため、飲食には細心の注意が必要である。
情報のアーカイブ:関連リンク
Dinas Lingkungan Hidup DKI Jakarta
Reference: ジャカルタ環境局(インドネシア語)
National Geographic – Jakarta’s Rubbish Mountain
Reference: バンタル・ゲバン特集(外部アーカイブ)
断片の総括
バンタル・ゲバン。それは、欲望が積み重なってできた「負の聖域」である。座標 -6.3470551, 106.9972179。ここで観測されるのは、不衛生や貧困といった単純な言葉では片付けられない、人間の持つ凄まじい「生存本能」と、文明が抱える「底なしの虚無」である。ゴミの山が高くなればなるほど、その影は長く伸び、私たちの住む美しい世界を侵食していく。
今この瞬間も、ジャカルタから運ばれてくるゴミによって、山は数ミリずつ成長を続けている。この「進入禁止区域」が崩壊し、その中身が溢れ出したとき、私たちは初めて自分たちが何を積み上げてきたのかを知ることになるだろう。それまでは、この灰色の山脈は沈黙を守り、ただそこに存在し続けるのである。
(進入禁止区域:016)
記録更新:2026/02/23

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