​「本記録における地図上の座標ピンは、広域表示の便宜上、対象の周辺地点を指し示している場合があります。現地の厳密な位置特定を保証するものではありません。」
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【残留する記憶:151】ホー・トゥイ・ティエン — 湖上に朽ちる「龍の心臓」

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LOCATION: HUE, VIETNAM (THUY TIEN LAKE)
COORDINATES: 16.407899, 107.578105
STATUS: ABANDONED WATER PARK / DARK TOURISM SPOT
KEYWORD: “GIANT DRAGON”, POST-APOCALYPTIC, URBAN EXPLORATION

ベトナムの古都フエ。王宮や壮麗な墓所が並ぶ歴史の街の南西に、21世紀の記憶が急速に腐食していく座標がある。座標 16.407899, 107.578105。ホー・トゥイ・ティエン・ウォーターパーク。かつて1万人を超える歓声を迎えるはずだったこの水の楽園は、今やジャングルに呑み込まれ、見る影もなく朽ち果てている。

この座標を象徴するのは、湖の中央に聳える「巨大な龍のオブジェ」である。コンクリートと鉄で作られたその巨躯は、かつては水族館への入り口として機能していた。しかし、現在は剥き出しの鉄骨と苔に覆われ、空ろな眼差しで静まり返った湖面を見つめている。ここは、投資の失敗と自然の執念が交差した、「終わった後の世界」を最も鮮烈に具現化している場所である。観測者が捉えた、この沈黙する遊園地の記録をアーカイブする。

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観測記録:地図上の異変としての「龍」

以下の航空写真を確認してほしい。座標 16.407899, 107.578105。湖の中に、蛇行するような奇妙な灰色の造形物がはっきりと確認できる。これが巨大なドラゴンの廃墟である。周囲には放棄されたウォータースライダーが蛇のように森の中に潜み、円形の劇場跡が衛星写真からも異様なパターンとして浮かび上がっている。ストリートビューでの確認、あるいは現地の散策動画の参照を強く推奨する。ドラゴンの口内から見渡す湖の風景は、かつての繁栄を夢見た人間の野望と、それを無慈悲に塗り潰した時間の質量を直接的に訴えかけてくるだろう。

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【残留する記憶】未完のユートピア

ホー・トゥイ・ティエンが建設されたのは2004年のことである。当時のベトナムの経済成長を象徴する一大プロジェクトとして、約300万ドルの巨費が投じられた。しかし、施設は未完成のままオープンを強行。その後、運営の杜撰さやアクセスの悪さが重なり、数年で経営破綻に追い込まれた。2006年前後に事実上の放棄。以来、この座標は「管理されない空間」となった。

放棄された直後の園内には、かつて展示されていた生きたワニが、水槽が壊れた後もそのまま湖に居座り続けていたという逸話がある(※現在は環境団体によって保護・移送されている)。この「ワニが放たれた廃墟」というニュースが、バックパッカーたちの間で伝説となり、世界中から「地図に載っていない秘密の場所」として探索者が訪れるようになった。ここにあるのは、歴史的な悲劇ではない。しかし、「本来あるべきだった幸福」が剥落し、剥き出しになった欲望の残骸が、訪れる者の心を強く揺さぶるのである。

龍の体内を彷徨う「空虚」

ドラゴンのオブジェの内部は、かつては水族館の展示エリアとして設計されていた。螺旋階段を登り、龍の喉元を通り、その口の中から外を眺めることができる。しかし、そこにあるのは最新式の水槽ではなく、割れたガラスと、落書きで埋め尽くされた壁面、そして湿り気を帯びたコンクリートの臭いだけである。この場所を「心霊スポット」と呼ぶ者は少ないが、「何かが決定的に欠落している」という感覚を覚える者は多い。それは、完成することなく死を迎えた建築物特有の「未練」かもしれない。

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当サイトの考察:自然が書き換える「物語」

■ 考察:廃墟は「失敗」の証明か

経済的な失敗という意味では、このパークは完全な失敗作です。しかし、ホー・トゥイ・ティエンが世界中の人々を惹きつけて止まない理由は、その失敗によって「人間の想像を超えた美」が生まれたことにあります。

コンクリートを貫いて成長する樹木、スライダーを覆い隠す蔦、そして錆びることでより威厳を増したドラゴン。これらは人間が設計したものではありません。自然というアーティストが、人間の放り出した「キャンバス」を20年かけて塗り替えた結果なのです。ここは、人間の文明が後退した際に、自然がどのような速度で「領土」を取り戻すのかを知るための、貴重なタイムラプスの現場なのです。

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【⚠ 渡航注意事項】沈黙の湖へ至る道

現在、ホー・トゥイ・ティエンは「非公式の観光地」として知られている。地元自治体による公園の再開発や解体の話が何度も浮上しているが、資金難により放置され続けているのが現状である。

■ アクセス方法:

* 主要都市からのルート:フエ市内中心部からタクシーやバイクタクシーで約15分〜20分。配車アプリ(Grab)の利用を推奨。
* 入り口の状況:公式なゲートは閉鎖されていることが多いが、地元の番人が「入場料」という名目のチップ(10,000〜20,000ドン程度)を要求してくる場合がある。これは公的なものではなく、あくまで非公式な慣習である。

【⚠ 渡航注意事項】
建物の老朽化と崩落リスク:
ドラゴンのオブジェやスライダーは極めて老朽化が進んでおり、鉄骨は錆び、コンクリートは脆弱になっている。特に螺旋階段や高所のプラットフォームは、いつ崩落してもおかしくない。立ち入りは完全な自己責任となる。

足場の悪さと害虫:
園内は舗装が崩れ、深い藪に覆われている。毒蛇や大量の蚊、また水たまりには危険な細菌が潜んでいる可能性がある。露出の少ない服装と適切な靴が必須である。

再開発による立ち入り制限:
近年、当局が安全上の理由から警備を強化し、完全に立ち入りを遮断する場合がある。現地の看板や指示には必ず従うこと。
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【現状の記録】消失しゆくドラゴンの記憶

2023年末、フエ当局はこのパーク一帯を整備し、公的なウォーキングパークとして再生させる計画を再度発表した。一部の廃墟は解体される可能性がある。座標 16.407899, 107.578105 が放つあの異様なエネルギーも、やがては「清潔な公園」へと浄化されてしまうのかもしれない。

  • 写真家たちの聖地:「世界の終わり」をテーマにした撮影場所として、インスタグラム等のSNSで常に注目されている。
  • 地域の憩いの場:皮肉なことに、公式な運営が停止した今、ここは地元の人々の静かな散歩コースや、夕日を眺めるスポットとして親しまれている。
【観測者への補足:根拠先リンク】
パークの歴史や最新の状況については、以下のニュースアーカイブを参照すること。
Reference: VnExpress – Abandoned Hue water park revamp
Reference: CNN Travel – Vietnam’s spooky abandoned water park
【観測終了】
座標 16.407899, 107.578105。夕刻、ドラゴンの空ろな目から差し込む光が、静寂の湖をオレンジ色に染め上げる。そこには、かつての賑やかさを惜しむ声も、失敗を嘆く声も存在しない。ただ、自然と人工物が静かに融合し、ゆっくりと大地へ還っていく。もしあなたがこの「龍の体内」を訪れるなら、そこにあるのは沈黙ではなく、時間の流れる音そのものであることに気づくだろう。

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