COORDINATES: 43.0159377, 142.0792270
STATUS: ABANDONED URBAN AREA / HISTORICAL CRIME SITE
KEYWORD: “H SHOJI”, INSURANCE MURDER, GHOST TOWN, COAL MINE ERA
北海道夕張市。かつて「黒いダイヤ」と呼ばれた石炭と共に、数万の魂がひしめき合った熱狂の街。しかし、エネルギー革命の波に飲まれ、街が衰退の影に覆われ始めた1984年(昭和59年)、日本中を凍りつかせる凄惨な事件がこの地で発生した。「夕張保険金殺人事件」。その舞台となったのが、炭鉱住宅が立ち並ぶ街区の一角にあった「H商事」である。
ここを【残留する記憶】としてアーカイブするのは、ここが戦後初めて「夫婦揃っての死刑執行」という重い司法判断を下されるに至った事件の爆心地だからである。主犯である夫婦は、暴力団員や炭鉱労働者を自社に住まわせ、多額の保険金をかけた上で放火殺人を行った。現在、その建物跡を含む周辺は、人口減少と経年劣化によって住人の姿が消え、静かに朽ちていくゴーストタウンと化している。しかし、空き家が連なるその街並みには、今なお言葉にしがたい、重苦しい空気が澱のように沈殿している。
観測記録:廃墟の中に残された「闇の形」
以下の航空写真を確認してほしい。かつての炭鉱街特有の、斜面にへばりつくように設計された規則正しい街区が見て取れる。しかし、多くの屋根は崩れ落ち、周囲を深い緑が侵食し始めている。かつて「H商事」という看板を掲げ、主犯夫婦が贅沢を尽くしながら獲物を物色していた住居兼事務所は、この座標付近に廃墟として現存している。ユーザーはストリートビューでこのエリアを巡回してほしい。そこにあるのは、単なる過疎化の景色ではない。ある種の「拒絶感」を孕んだ、時が止まった空間である。
※夕張市鹿島周辺。炭鉱住宅の面影を残しながらも、大半が廃墟化している。
COORDINATES: 43.0159377, 142.0792270
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【残留する記憶】「H商事」という名の檻
この座標に刻まれた記憶は、人間の強欲が底なしであることを証明している。
- 夕張保険金殺人事件:1984年、H商事の宿舎に火が放たれ、子供を含む複数人が犠牲となった。当初は不幸な火災と見られていたが、その背後には総額1億数千万円に及ぶ保険金詐取計画が隠されていた。
- 主犯夫婦の異様さ:夫は元暴力団員、妻はかつて「炭鉱の女王」と呼ばれたほどの美貌。彼らは夕張の衰退を利用し、行き場を失った人々を「食いもの」にした。その冷酷さは司法を揺るがし、戦後初めての夫婦への同時死刑判決へと繋がった。
- 消えた街区:事件後、夕張の急速な過疎化と相まって、この一角からは人の気配が完全に消えた。建物だけが残り、記憶だけが風化を拒んでいる。
炭鉱の残り香と負の遺産
かつてこの界隈は、炭鉱マンたちの活気で溢れていた。しかし、H商事跡地周辺に立つと、かつての栄華の欠片が、錆びたトタンや割れたガラスの中に無残に散らばっているのがわかる。それは、街の死と事件の闇が共鳴しているかのような、特異な光景である。
当サイトの考察:街の寿命と「魔」の侵入
夕張という街は、ある意味で「極端」な場所です。爆発的な人口増加と、それに続くあまりにも急激な衰退。この劇的な変化が、人々の心に「空白」を作り出したのかもしれません。
H商事の主犯夫婦は、その空白に滑り込みました。共同体が崩壊し、他者への関心が薄れ始めた街で、彼らは「弱者」を効率的に管理し、金に変えたのです。
現在、この場所がゴーストタウンとなっているのは、経済的な理由だけではないように感じます。あまりにも深い「負の記憶」が土地に染み込み、再生という選択肢を奪ってしまったのではないでしょうか。私たちはこの座標を通して、街が死にゆく過程で発生する「魔」の正体を観測しているのかもしれません。
【⚠ 渡航注意事項】静寂の廃墟街を歩く者へ
現在、夕張のこのエリアは一部がゴーストタウン化しており、立ち入りには厳重な注意が必要である。
* 起点:札幌中心部から道東自動車道経由、車で約1時間半。夕張IC下車後、市内北部へ。
* 手段:公共交通機関(バス)は極めて本数が少ないため、自家用車またはレンタカーが必須である。
【⚠ 渡航注意事項】
建物の倒壊リスク:
周辺の家屋は数十年にわたり放置されており、積雪の影響でいつ倒壊してもおかしくない状態にある。廃墟内部への侵入は物理的に危険なだけでなく、法的にも住居侵入罪に問われる可能性がある。
野生動物の遭遇:
人の気配が消えたことで、ヒグマの出没が日常化している。特に夕刻から早朝にかけての探索は致命的なリスクを伴う。
住民への配慮:
ゴーストタウンと呼ばれてはいるが、ごく少数の住民が生活を続けている街区も近隣に存在する。冷やかしや大声での散策、無断での撮影は厳に慎まなければならない。
【プラスの側面】夕張の再生への模索
負の記憶を抱えながらも、夕張は新たな道を切り拓こうとしている。
- 夕張メロンと食の文化:この過酷な歴史を持つ大地が育む「夕張メロン」は、今や世界的なブランドである。絶望の中から生まれた至高の甘みは、街の誇りとなっている。
- シネマの街としての記憶:かつて映画祭で賑わった夕張には、今も映画看板があちこちに残り、文化的な残り香を感じさせる。
- 「負の遺産」を語り継ぐ:凄惨な事件も含め、夕張が辿った波乱万丈の歴史を学ぶことは、日本の近代化と都市のあり方を考える上で、これ以上ない生きた教科書となるだろう。
座標 43.0159377, 142.0792270。かつて「H商事」と呼ばれたその場所には、今や北風が吹き抜ける音だけが響いている。夫婦という最小のユニットが引き起こした最大の悲劇。このアーカイブが、豊かさの裏側に潜む人間の業と、忘れ去られようとしている街の痛みを記録に留める一助となれば幸いである。

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